内臓は全身の若さをキープする「エネルギー製造工場」
体に必要な栄養を消化・吸収できるのは内臓のおかげ |
いわば内臓はアンチエイジングの土台。美容面でアンチエイジングを考える場合も、内臓の健康を維持することはとても重要なのです。
口でよく噛み砕かれて飲み込んだ食べ物は、食道を通って胃に送り込まれます。胃では、胃液が分泌されて食べ物を消化しやすいドロドロの状態にして小腸の十二指腸に送り込みます。
十二指腸では肝臓や膵臓から消化液(胆汁・インスリンなど)が分泌され、胆汁は脂肪、インスリンは糖を吸収しやすい形に変えて、6mほどある小腸の中を速いスピードで移動しながら、小腸の壁にある繊毛から血管に吸収されます。
小腸での長旅を追え、栄養分をほとんど吸収された食べ物の「残りかす」は大腸に運ばれ、残った水分を吸収しながら便として排出されます。
消化(分解)・吸収力って?
(左)食べ物のタンパク質を形成するアミノ酸。たくさんのアミノ酸が絡み合って分子も大きくこのままでは吸収できないので、右のようにアミノ酸をつなぐ鎖を切って小さくする |
一方、吸収とは、腸の粘膜から小さく短くなったアミノ酸などの成分を浸透させること。腸の内側は皮膚と似ています。ちょうど私たちがスキンケアで美容液を肌に塗って、「しっかり浸透しますように!」と願うときのイメージと同じことが、腸の中でも行なわれているのです。
スキンケア用品でも「低分子化して肌への浸透力を高める」という説明を聞きますが、消化と吸収は、まさにこれと同じ作業を行なって栄養が効率的に体に補給されるようにサポートしているのです。
内臓の老化は消化・吸収力の低下
内臓の不調はさまざまな体のトラブルを引き起こす |
1. 胃の老化……消化力の低下。胃もたれ、げっぷ、胃痛、食欲減退、胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、ピロリ菌など
2. 肝臓の老化……タンパク質の消化・分解力低下。体力・気力減退、疲労、肝炎など
3. 膵臓の老化……糖の消化・分解力低下。糖尿病、肥満、体重減少など
4. 小腸の老化……吸収力の低下。下痢、食欲減退、炎症など
5. 大腸の老化……吸収力・排出力の低下。便秘、下痢、腹痛、大腸ポリープなど
皆さんのアンチエイジングを支える、大切な5つの臓器を老化させないポイントを紹介します。
■胃の老化
胃の老化とその原因
胃腸の動きの鈍化、胃液の分泌の低下などが典型的な胃の老化現象 |
胃の揉み出すような蠕動運動も年齢とともに弱くなり、消化力も低下して胃もたれや胃のむかつきの原因になります。
またピロリ菌という酸に強く胃に棲み付くことができる菌に感染すると、胃炎、胃潰瘍、胃炎を起こすことが多く、加齢とともにピロリ菌が棲み付くリスクが高くなります。
胃の老化予防とアンチエイジング法
胃の老化を予防するには、まずよく噛んで食べること。歯でよく噛み砕くことで、胃で消化する負担を軽くできると言われています。唾液には糖を分解するアミラーゼという酵素と、脂肪を分解するリパーゼという酵素が含まれており、消化液として立派に活躍していますから、よく噛んで口の中で唾液と混ぜることは胃に優しいアンチエイジング法なのです。逆に、極端なダイエットや流動食のようなものばかりを食べていると、胃の運動機能が落ちる原因になるので注意しましょう。
ピロリ菌の検査は病院で検査薬を飲んだあと、呼気を採取するだけで受けられる簡単なものなので、一度検査をしておきましょう。
胃薬には胃の酸性度を薄めるもの、胃酸の分泌を促進するもの、胃の粘膜を保護するものなど、機能が異なるものが市販されているので、薬局で購入する場合は薬剤師さんに相談して選んでください。
ガイドは胃もたれや二日酔い、胸焼けのときには必ず大根おろしにレモン汁か昆布茶の粉をかけてご飯茶碗に1杯食べます。アミラーゼをたっぷり含んでいる上、美肌効果もあるビタミンAやビタミンCも豊富な大根は、胃をいたわる食材です。
■肝臓の老化
肝臓の老化とその原因
お酒は度を過ぎると肝臓に大きな負担をかけて老化させる |
もちろんこれだけの役割を担っているのですから、長く使い続ければ消耗・老化します。メンテナンスを怠らず、無理せず丁寧に運転すれば、長年故障なく運転できるクルマのように、肝臓にも無理をさせないように働いてもらうことが大事です。
肝臓の老化予防とアンチエイジング法
肝臓の老化を防ぐポイントは、アルコール分解という余計な仕事で肝臓を疲れさせないよう、お酒を控え目にすること。喫煙も解毒作用をしなければならず、肝臓にとって大きな負担なので禁煙を心がけましょう。暴飲暴食も必要以上に肝臓を働かせてしまう原因ですから、1日の摂取カロリーに注意しましょう。脂肪の多い食事も、必要以上に胆汁を分泌させてしまうので肝臓を老化させます。適度な運動でエネルギー代謝を高めることも、肝臓に余分な栄養を貯蔵しすぎないために重要です。
ガイドは、二日酔いや肝臓に負担をかけてしまったときに、血行を促進して肝機能を高めるターメリック(クミン)をたっぷり入れてカレーを作ります。タコやホタテ、カキなどを入れて魚介カレーにすると肝臓の働きを助ける亜鉛やタウリンを補給できます。
■膵臓の老化
膵臓の老化とその原因
膵臓は胃の裏になる小さな臓器だが血糖値のコントロールや三大栄養素の分解など働きは大きい |
膵臓も肝臓と同じように働き者の臓器で、血糖値のコントロールは膵臓がほとんどその役割を担っています。膵臓機能が衰えるとインスリンが十分に分泌されなくなり、血糖値をコントロールできず、糖尿病へと進んでしまうことも。
食べ過ぎは必要以上に膵臓を老化させる可能性があります。また急激な血糖値の上昇もインスリンの分泌が急激に必要になり、膵臓によくありません。1日3食バランスのいい食事を心がけましょう。
膵臓の老化予防とアンチエイジング法
膵臓をいたわるには、暴飲暴食を避けること。朝食や昼食を抜いたりして空腹になると、低血糖状態でイライラ、めまい、立ちくらみを起こすだけでなく、その後に食事を取ったときに急激に血糖値が上昇して血糖値を平常に戻すためにインスリンが大量に必要になり、膵臓をフル稼働させてしまい老化の原因になります。食事は3回に分けて規則正しく食べ、急激な血糖値の上昇による膵臓の老化を予防しましょう。また血糖値の上昇がゆるやかで吸収もゆっくり行なわれるためお腹の減りにくい低GI食品を選んで献立を考えると、膵臓にもいいダイエット食になります。ご飯大好きのガイドは白米を低GI食品の代表でもある玄米に切り替えたり、パスタを全粒粉にして膵臓を傷つけない食生活を心がけています。
■小腸の老化
小腸の老化とその原因
小腸は栄養吸収と外敵を排除する大切な守りの要 |
小腸の内側の壁にある細胞のターンオーバーは3日程度と皮膚よりも早く、生まれては剥がれ落ちて排出されていますから、ポリープや炎症は少ないと考えられ、年齢を経てもあまり変化しないものと思われていました。
しかし、近年内視鏡カプセルという小さなカプセル状のカメラを飲み込んで小腸内の観察ができるようになると、さまざまなことがわかってきました。
まず小腸も老化したり、食べ物が通過しなくなったりすると、小腸の内側を覆うカーペットのような絨毛が退化して短くなり、吸収力が低下することがわかりました。さらに加齢によって、小腸と大腸のつなぎ目部分のバルブがゆるんで、大腸側にいる悪玉の腸内細菌が小腸に侵入し、小腸に炎症やトラブルを起こすこともあるようです。また小腸には、外敵の侵入を防ぐ免疫機能もありますが、加齢によってこの機能も低下して、細菌感染やウイルス感染しやすくなるようです。
小腸の老化予防とアンチエイジング法
小腸の老化予防として考えられるのは、食べ物を規則正しく食べて刺激することです。使わないことで小腸の細胞のターンオーバーが遅くなったり、絨毛が短くなったりするのを避けるためにも、3食規則正しく食事を摂りましょう。脂肪の多い食事は、脂肪の吸収作業という小腸が担う複雑な仕事を増やしてしまうため、よくありません。注意しましょう。
加工食品や、人工的に作られた食品はアミノ酸の構造が複雑で、固まった数珠のように分解しにくいため小腸に余計な負担をかけますから、なるべく自然の食材をとるようにしましょう。
■大腸の老化
大腸の老化とその原因
大腸は消化吸収後の排出という掃除役を担う |
加齢とともに大腸も老化します。まず大腸の筋肉が老化して蠕動運動という不要物を押し出す力が衰え、それが悪玉の腸内細菌を増やしたり、便秘の原因になります。さらに大腸の内側の壁にある細胞から分泌され、腸を保護する膜の役割をする大腸液の分泌が低下し傷つきやすくなり、大腸ポリープや炎症を起こしやすくなります。
母乳を飲んでいた赤ちゃんの頃の腸には、ビフィズス菌などの腸の調子を整える善玉菌が多いのですが、加齢とともにいろいろなものを食べるようになるといろいろな菌が棲み付いて、悪玉菌も増えてしまいます。悪玉菌は腸内でメタンガスやアンモニアなどの有害物質を作り出し、お腹の張り、おなら、腹痛、肌荒れ、便秘などの原因を作ります。
大腸の老化予防とアンチエイジング法
寝る前にガイドが行なっている「マイルドな腸押し」で腸スッキリです! |
小腸で消化・吸収されず大腸に届く食物繊維は、大腸の掃除役と腸内細菌のエサとして大活躍します。海藻や豆類、果物類に多く含まれる水溶性食物繊維は、水分を含んで便のかさを増やして柔らかくします。不溶性食物繊維はゴボウ、ニンジン、セロリ、玄米、イモ類などに含まれて、繊維質のガサガサで腸の壁を刺激して腸の運動を活発にしたり、腸内細菌のエサにもなります。
善玉菌そのものをヨーグルトや、乳酸菌飲料、サプリメントなどで摂るのも大腸の健康に欠かせません。ガイドは1日200gを目標にヨーグルトを摂るようにしています。乳酸菌入りのサプリメントなども時々利用します。
大腸でビフィズス菌などの善玉菌のエサになるのがオリゴ糖です。低カロリー甘味料としても有名で、ダイエットでは砂糖の代用品として使われますが、大腸の健康を考えて、善玉の腸内細菌が多い健康的な腸内環境をキープするならば、オリゴ糖を利用しましょう。